キーパー ある兵士の奇跡

MOVIE
引用元:松竹

松竹から2020年10月23日に劇場公開された「キーパー ある兵士の奇跡」の感想記事です。

元ドイツ兵の身分からマンチェスター・シティFCのサッカー選手に転身し、その後イギリスの国民的英雄となったバート・トラウトマンの実話を基にしたイギリス、ドイツ合作の伝記作品です。

オススメ度3.9

あらすじ&予告編

1945年、イギリスの捕虜となったナチス兵トラウトマンは、収容所でサッカーをしていた折に地元チームの監督にスカウトされる。

その後、名門サッカークラブのマンチェスター・シティFCにゴールキーパーとして入団するが、元ナチス兵という経歴から想像を絶する誹謗中傷を浴びせられてしまう。

それでもトラウトマンはゴールを守り抜き、やがてイギリスの国民的英雄として敬愛されるように。

しかし、そんな彼には誰にも打ち明けられない秘密の過去があった…

作品情報

原題:The Keeper

製作国:イギリス、ドイツ(2018年)

配給:松竹

監督:マルクス・H・ローゼンミュラー

本編:119分

出演:ダフィット・クロス、フレイア・メイヴァー、ジョン・ヘンショウ、ハリー・メリング、デイヴ・ジョーンズ、マイケル・ソーチャ、クロエ・ハリス、ミッキー・コリンズ、ゲイリー・ルイスほか

レビュー

元ナチス兵がイギリス軍の捕虜となり、その類い稀なゴールキーパーとしての才能をスカウトされ、後にプレミアリーグでスタープレイヤーに、さらには国民的英雄となっていく。

そんなフィクションで作られたかのような王道サクセスストーリー的な展開と、実話を基にすることで闇深さをもしっかり露呈していて、それがまた作品に深みを落とし込んでいます。

アメリカの”人種問題”x”スポーツ”は間違いなく良作になることが多い王道脚本ですが、”戦争”x”スポーツ”、そして実話で繰り広げられるドラマチックで感動的な半生と、戦争を美化せず不遇な時代を生きた人々を描いたスポーツの力を感じる映像作品。

サッカーに明るくない人でもワールドカップの盛り上がりから、オリバー・カーン、マヌエル・ノイアーといった名キーパーの名は轟いていることからもドイツ=”守護神”の イメージが強いですよね~

サッカーシーンは素人が見てもややお粗末さはありますが、時代背景なども相まって見慣れますし、上手く編集されたキーパーのセーブシーンはそれなりに迫力があるように感じます。

そんな主人公トラウトマンを演じるのが、ベルンハルト・シュリンク原作のベストセラー小説『朗読者』の映画化『愛を読むひと』(2008)で青年時代のマイケルを演じたデビッド・クロス。

若々しさと人柄の良さが際立つ青年は健在で、スター俳優として抜群の演技力を披露しています。

また、トラウトマンを支える妻のマーガレットをフレイア・メーバーが好演。 境遇に負けない力強い女性を熱演し、その美貌で作品に引き込んでくれます。

トラウトマンについては個人的に全く知識を持たずに鑑賞しましたが、やはり1人の人間の人生をリアルに描くのであれば単純なサクセスストーリーのヒューマンドラマにはなり得ないのが実情。

戦後のナチ差別と戦中犯罪のトラウマ、試合中のケガ、最愛の息子を事故で失うなど、実話を基にした脚本は丁寧かつ大胆に心の葛藤や苦悩を表現しています。

戦争犯罪を見逃した後悔の念からくるフラッシュバックと、夫婦生活の破綻を大きく描くのは何か意図があったのかもしれませんが、個人的には再起まで描いて欲しかったというのが本音です。

戦争が無くてもおそらくドイツで大活躍するサッカー選手になったでしょう。 しかし、戦争があったからこそ両国の架け橋になったり、映画化されるまでの伝説的な人物になり我々が知り得るきっかけとなるとはわからないものですね…

戦争とスポーツを題材にしながらも上手くエンターテインメントに昇華させ、敵国同士の男女が結ばれる恋愛ドラマに押さえつけず、しっかりと人間味とリアリティを表現した秀作です。

評価

脚本4.0

配役4.5

演出4.0

音楽3.5

映像3.5

 IMDb 7.2 / 10

ROTTEN TOMATOS Tomatometer 87% Audience 88%

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