上のイメージ図のように足首の捻挫は大半で内反強制される足関節内反捻挫(以下内反捻挫)といいます。
内反捻挫では主に足関節の外側靭帯が損傷されます。
しかし、誰もが1度は経験したことのあるように、保存療法によって良好な経過をたどることが多いです。
損傷の程度も様々であるため、受傷後に疼痛が長期間継続したり不安定感が残存すると、スポーツ復帰までに時間を要したり、手術が必要になることもあります。
そんな内反捻挫を病態と自身の経験とを併せてお話したいと思います。
発生機序
多くは足関節が底屈位で過度な内反を強制されて発生します。
<内反捻挫が多い理由>
①内側の三角靱帯が強靱であるのに対し、外側の前距腓靱帯・踵腓靱帯などは強度が劣ること。
②外果と比べ内果が近位に位置し、骨性の制限がないこと。
→内くるぶしが上にくるため、内反していくときに動く範囲が広い。
③距骨滑車前方に比べ後方が狭いことから、足関節底屈位では足関節のあそびが大きくなること。
→距骨の動きは足首を下に向けた際に動きが大きくなる。
④腓骨筋が底屈位で機能しづらいこと。 が、挙げられます。
損傷部位
内反捻挫に伴う主な損傷部位として足関節外側の前距腓靱帯や踵腓靱帯が挙げられます。
特に足関節底屈・内反位であることから前距腓靱帯が最も損傷しやすいです。
また、腓骨が過度に下方に牽引されることによって遠位脛腓靭帯の損傷も多く見受けられます。
距骨滑車外側面と外果の内側関節面とが衝突し、下脛腓関を離開する力も加わることが原因と考えられます。
これらの損傷によって外果周辺部に痛みを生じ、ひどい場合は腫れ上がることで外果の位置を確認出来ないほどにまでなると思います。
受傷後
以前は以下の頭文字をとってRICEと言われてきましたが、鎮痛に効果はあるが怪我の治りを遅くしてしまうおそれがあると科学的に疑問視されることもあり、現在はRestとIceは除外されています。
Rest(安静) Ice(冷やす) Compression(圧迫) Elevation(挙上)
現在のスポーツ医学ではRICEではなくPEACE&LOVEが使われていますし、実際にも効果が感じられますので是非使ってみて下さい。
受傷直後-PEACE-
Protection(保護) → 損傷を最小限に留める為
Elevation(挙上) →心臓より高い位置に挙げ、組織外から乾漆駅への還流を促す
Avoid anti inflammatories(抗炎症剤を使用しない) →組織の治癒を遅らせない為
Compression(圧迫) →余計な出血、浮腫を抑える。
Education(教育) →積極的にアプローチするメリットを学ぶ
無理矢理PIECEにした感じは置いといて(笑)、経験済みの方にはわかると思いますが特に重要なのはProtection(保護)とCompression(圧迫)ではないでしょうか。
受傷は大体自宅以外の場所で起こることが多いと思います。
帰り道に階段で軽く同じところを捻った。雨で滑って余計に痛めたなんてこともあるかもしれないのでProtection(保護)を怠ることは早期回復の妨げになること間違いなしです。
また、靱帯損傷がある場合などハデにやったなーって時は割とすぐにどんどん腫れていきますのでCompression(圧迫)も非常に大事です。
腫れの影響で足首が曲がらないなんて状態になってしまうと適切な可動域が得られませんので、これまた早期回復の妨げになります。
ざっくり言うと私の場合、Ankle Supportをバスケの際は常に持ち歩いておりますので、捻挫した場合即座に離脱しとりあえず装着することでProtection(保護)とそれなりのCompression(圧迫)を得ています。
程度によっては痛みや熱感などを減らすためのアイシングを一緒に行う場合もあります。
受傷翌日以降-LOVE-
Load(負荷) →適度な負荷をかけることにより、組織の修復機能の促進が促されます。
Optimism(楽観主義) →ネガティブは科学的に治療の妨げになることが証明されています。
Vascularisation(血管新生) →早期の有酸素運動により全身の血流を良くすることで、機能や状態の回復を促します。
Exercise(エクササイズ) →早期から痛みのない範囲で動かすことにより、筋力や感覚の回復を促すことが出来ます。
ここで最も重要なのはLoad(負荷)です。 まぁ翌日以降からの負荷と言ってもピンとは来ないと思いますが、ここで言う負荷は往々にして「荷重」のことです。
よく捻挫後にかばって歩くイメージがすり込まれていますが、実はこれが良くなくて適切に荷重していくことのほうが回復としては早いんですよね。
もちろん痛みがあったり腫れがあると難しいんですが、冒頭で述べたとおり内反捻挫は足関節の底屈と内反が強制されて起こるので、それを助長しないためにもかばって変な歩き方をするのは気をつけたいところです。
腫れが引いたら…
PEACE & LOVEを行い、腫れや痛みがある程度引いた後、特に正常なスポーツ動作をする上で最も重要なのが「可動域」です。
この可動域を邪魔するのがアキレス腱からふくらはぎに大きく伸びている腓腹筋であったり、腓骨筋であったりするのですが、その筋肉が左右を比較して同等に柔軟性を保てているかどうかが重要になります。
冷えや動かし不足で固まる関節を自力で動かし、左右差のない足関節にするのが競技復帰の第一歩なのは間違いありません。
リハビリテーション
靱帯がたとえ切れて無かろうとも、関節の安定性が保たれていれば手術の適用にはならないようです。
私事ですが、現に両足の前距腓靭帯断裂を経験しながらも何不自由なくスポーツをしています。
筋力でサポートすることで安定性を高め、スポーツでの高パフォーマンスをキープすることは自身の身体をもって確信していますので、前距腓靱帯を断裂したあとに行ったリハビリのメニューを自分なりに分析しこ紹介します。
1.可動域
足関節の適切な可動域を左右差なく再獲得しましょう。
周囲の筋肉の柔軟性の確保が必須です。
2.筋力
つま先立ち→母趾球にしっかり体重をのせて行う。
ツイスティング→つま先立ちの状態で膝を曲げ、おへそより下を左右へ捻る。
3.バランス
つま先立ちでキープする
4.アライメント
荷重時をはじめステップ動作やジャンプの着地、方向転換の際に捻挫した足を庇って膝を内側に捻ってしまったり、身体が傾いてしまったりといった全身の位置関係を把握し修正しましょう。
上記の各種運動でも常にアライメントの意識は必須です。
以上の4点を念頭にスポーツ動作へ復帰していくことが最短ルートであると言って良いと思います。
もちろん骨棘の形成や不安定性の残存で、上記のようにスムーズにスポーツ復帰が得られない場合もありますので、痛みが長引く場合や自己判断が難しい場合はドクターに相談する必要があります。
地味で面白みもないものですが、怪我の功名という言葉もあります。
是非この機会に足首だけでなく自身の身体を見直してみてはいかがでしょうか。
怪我で不安感を持つ人々に自身の経験から誰かの助けとなると幸いです。