ケイコ 目を澄ませて

ハピネットファントム・スタジオから2022年12月16日に独占配信された「ケイコ 目を澄ませて」の感想記事です。

2013年までに4戦を戦った耳が聞こえない元プロボクサーの小笠原恵子の自伝「負けないで!」を原案とした作品です。

第46回日本アカデミー賞で岸井ゆきが最優秀主演女優賞を受賞しています。

オススメ度3.7

あらすじ&予告編

生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。

嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。

ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。

そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る…

作品情報

製作国:日本(2022年)

配給:ハピネットファントム・スタジオ

監督:三宅唱

本編:99分

出演:岸井ゆきの、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美(HIMI)、中原ナナ、足立智充、清水優、丈太郎、安光隆太郎、渡辺真起子、中村優子、中島ひろ子、仙道敦子、三浦友和ほか

レビュー

生まれつきの聴覚障害を持つ女子プロボクサーの苦悩と葛藤を描いた作品。

小笠原恵子の実話に基づく作品ゆえに、身体作りやボクシング技術に余念なく取り組んだように見える岸井ゆきのの努力が垣間見え、加えて手話と表現力だけで感情を伝える難しい役どころを見事に演じています。

コロナ禍を舞台に設定されている本作では、当然のように人々がマスク生活し、耳の聞こえないケイコにとって口元を隠すマスクは人との繋がりをより隔てたものと表現されています。

終始怒ったようにも見える表情は、世の中の不条理さを訴える眼差しなのか、対人関係を築く上での防御反応なのか。 ボクシングはやるせなさや怒りを発散させる矛先なのか、それとも強さを手に入れるための手段なのか。 多くは語られなくとも、それが正解だったということは、終盤で見せる笑顔が証明していて、巧妙に際立たせている演出は見事です。

なんにしろボクシングという打ち込めるものに出会い、三浦友和演じるジムの会長らに支えられながら見せる彼女の生き様は見ていて美しい。

文字通り“目を澄ませて”観ることに特化している作品で、耳を補うように目で訴える表現力、手話やボクシング然り、我々もまた目で感じることを余儀なくされる演出に、”見る”大切さを思い知らされます。

コーダ あいのうた」(2022)や「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」(2020)をはじめ、昨今聾者を描く作品を多々見受けますが、音に拘りを持った素晴らしい作品が多いですよね〜

日本では聾者を演じる聾者の俳優を見ることが今はないですが、海外同様に徐々にそういった役どころが増えると良いですね〜

また、本作ではコロナと言わずにコロナをしっかり描写する、さも当たり前の日常を切り取った作品に仕上がっているのも印象的です。

2020年代の映画でここまでストレートにコロナをも自然に取り入れて描いている作品は少ないかもしれませんね〜

目で感じる秀作。 何かに打ち込む素晴らしさを教えてくれる作品です。

評価

脚本3.5

配役4.5

演出3.5

音楽4.0

映像3.0

IMDb 7.0 / 10

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