ファントム・フィルムから2017年3月31日に劇場公開された「ムーンライト」の感想記事です。
タレル・アルヴィン・マクレイニーによる “In Moonlight Black Boys Look Blue“ を原案とした作品で、第89回アカデミー賞では8部門でノミネートを受け、作品賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚色賞を受賞しています。
オススメ度
あらすじ&予告編
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校では「リトル(チビ)」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。
そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケヴィンだけ。
やがてシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。
そんな中、ある事件が起こり…
作品情報
原題:Moonlight
製作国:アメリカ(2016年)
配給:ファントム・フィルム
監督:バリー・ジェンキンス
本編:111分
出演:トレヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ、アシュトン・サンダース、ジャレル・ジェローム、ナオミ・ハリス、マハーシャラ・アリ、アレックス・ヒバートほか
レビュー
麻薬中毒の母親とマイアミの貧困地域に住み、孤独を抱えながらも自分の居場所とアイデンティティを模索する主人公シャロンの姿を、幼少期、少年期、青年期の3つの時代に分け、色彩豊かな映像とエモーショナルな音楽で繊細に映し出した作品。
黒人差別を扱った作品は数多くあれど、黒人コミュニティからさらにジェンダー的な問題に切り込んだ作品は観たことがない。
それでいて貧困に薬物問題にネグレクト、人種的問題からジェンダー的にマイノリティを突き詰め、アメリカの全ての社会問題が降り注いだかのように主人公が受ける苦難を描きながら、本作はロマンス作品でもあります。
弱いモノが、さらに弱いモノを。といった感強の中、黒人男性社会を生きる若者は筋肉の鎧を着込む。 そんな抑圧された現状を打開する”愛”の偉大さを説いていく。
全ての要素が重くのしかかる程の題材を描きながら、センセーショナルな映像と色使いが、月明かりに照らされたように包み込み、愛や優しさといった普遍的なものの輝きを感じさせられます。
本作は、主人公の人生を幼少、少年、青年と、3つの時代で描き、それぞれをアレックス・ヒバート、アシュトン・サンダース、トレヴァンテ・ローズが演じています。
にもかかわらず、1人の人物にしか見えない。
「同じフィーリング、同じ雰囲気、同じ要素をもつ俳優を探そうと思った」という、監督を務めたバリー・ジェンキンスの強いこだわりで、同じ光を映す瞳の3人が選ばれ、1番センシティブな問題をクリアしているのは間違いないでしょう。
かつて見てきた黒人映画のルーティンを悉くスルーし、知的でエモーショナルでエロティックさもあり、優しさと愛も溢れるストーリー性で全編を全うしています。
「月明かりで、お前はブルーに輝く」
こんな優しくてスマートで格好良いセリフ、いつか言ってみたい…
そしてタイトル効き過ぎてる…
製作総指揮に名を連ねるブラッド・ピット以外は、無名の監督とキャストによる小規模作品ながら、間違いなく心情に訴える秀作であると感じます。
評価
脚本
配役
演出
音楽
映像
IMDb 7.4 / 10
ROTTEN TOMATOS Tomatometer 98% Audience 79%
metacritic METASCORE 99 USER SCORE 7.1
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