白鍵と黒鍵の間に

東京テアトルから2023年10月6日に劇場公開される「白鍵と黒鍵の間に」の感想記事です。

エッセイストとしても才能を発揮するジャズミュージシャン南博の『白鍵と黒鍵の間に -ジャズピアニスト・エレジー銀座編-』を原作とした作品です。

オススメ度4.4

あらすじ&予告編

昭和63年、銀座のキャバレー。

ジャズピアニストを夢見る博は店を訪れた男に「あの曲」をリクエストされ、「ゴッドファーザー 愛のテーマ」を演奏する。

ところが、その曲をリクエストできるのは銀座一帯を牛耳るヤクザの会長である熊野だけで、演奏を許可されているのも会長がひいきにするピアニストである南だけだった。

博がその曲を演奏したことで、二人のピアニストの運命が大きく狂い始める…

作品情報

製作国:日本(2023年)

配給:東京テアトル

監督:冨永昌敬

本編:94分

出演:池松壮亮、仲里依紗、森田剛、高橋和也、クリスタル・ケイ、松尾貴史ほか

レビュー

2023年9月20日 渋谷ユーロライブにて行われたトークイベント付き試写会で鑑賞させていただきました。

昭和とジャズが用いられていることから、勝手にバブル景気と陽気なジャズを想像してしまいがちですが、そういった側面を持ちつつもキャバレーで働き、ヤクザと関わりを持つジャズピアニストを目指す苦労や葛藤がメインに据えられています。

”南”と”博”という同一人物を分け、3年間を隔てた時間軸を一晩で交差させる抜群の脚本によって、予想を大きく裏切るシュールなクライマックスまで一気に突っ走る様は見事としか言いようがない。

一人二役で2人のジャズピアニストに扮した池松壮亮は、それぞれを繊細に演じ分けるとともに、時に時間軸を歪めるなど演技力の幅広さを感じさせ、作品に深みを与えてくれています。

昭和の売れないバンドマンのイメージそのもののような高橋和也や、何を考えてるか分からない良い意味で不穏な雰囲気を醸し出す森田剛、抜群の歌唱力を披露するクリスタル・ケイ、私生活の派手さと比較して大人しい仲里依紗など、南を取り巻くクセの強いキャラクターたちの群像劇としての側面も面白さを引き立てているように感じます。

ミュージシャンの理想と現実を描きながら迎えるセッションでは、音楽映画と言って良いほどの躍動感と多幸感溢れる演出に舌を巻きました。

実際に「ゴッドファーザー 愛のテーマ」をはじめ、池松壮亮が弾いている部分が多いようで、その作り込みに脱帽してしまいますね〜

そこから急転直下のビルの谷間のシーン… どこまでが現実でどこからが幻想なのか解釈の難しい世界観と、同じようにふわふわとした昭和感が絶妙にマッチした作品であるように感じました。

ノンシャラントに。 劇中何度も出てくる言葉ですが、ジャズというジャンルを説明するのが難しいように、大枠で捉えることで非常に感慨深く引き込まれる”ジャズってる”良作であると思います。

原作を読んでもう1度観たい作品です。

評価

脚本4.5

配役4.5

演出4.0

音楽5.0

映像4.0

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