キノフィルムズより2024年6月7日に劇場公開された「あんのこと」の感想記事です。
ある少女の人生をつづった2020年6月の新聞記事に着想を得て撮りあげた人間ドラマ作品。
オススメ度
あらすじ&予告編
売春や麻薬の常習犯である21歳の香川杏は、ホステスの母親と足の悪い祖母と3人で暮らしている。
子どもの頃から酔った母親に殴られて育った彼女は、小学4年生から不登校となり、12歳の時に母親の紹介で初めて体を売った。
人情味あふれる刑事・多々羅との出会いをきっかけに更生の道を歩み出した杏は、多々羅や彼の友人であるジャーナリスト・桐野の助けを借りながら、新たな仕事や住まいを探し始める。
しかし突然のコロナ禍によって3人はすれ違い、それぞれが孤独と不安に直面していく…
作品情報
製作国:日本(2024年)
配給: キノフィルムズ
監督・脚本:入江悠
本編:113分
出演:河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、河井青葉、広岡由里子、早見あかりほか
レビュー
コロナ禍である若い女性の身に起きた実際の出来事に着想を得て映画化した、真摯で重苦しい社会派ドラマ作品。
脚本も兼ねた入江悠らしくないテイストに感じるが、しっかりと過酷を極める人生の一端を表現していて、社会派の高いハードルを超え観客の心を鷲掴みししたのではないでしょうか。
近年、社会の底辺とも呼べるようなもがく人々の可視化を試みた作品が散見されるようになった気がしますが、実話をベースとしながら辛く悲しい物語を現実感ある手触りで描いていることに加え、キャストの圧巻と呼ぶに相応しい演技力が印象的です。
日本を代表する俳優となった河合優実が鬼気迫る演技で観る人々をくぎ付けにします。 それは時に見るのがしんどいとさえ感じるほどに。
佐藤二朗も存在感を大いに発揮しているし(コメディ全開以外の彼を観たのが少ないのでここまで良い俳優だとは思っていなかった。)、稲垣吾郎の週刊誌記者役も実にハマっている。(ラストへ繋がる内容に皮肉も込めて) そして、母親役の河井青葉もすごい。
人間の脆さや弱さを痛感させられる心に刺さる秀作です。
評価
脚本
配役
演出
音楽
映像
IMDb 7.2 / 10