名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN

ウォルト・ディズニー・ジャパンから2025年2月28日に劇場公開された「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」の感想記事です。

2015年に出版されたイライジャ・ウォルド著の『Dylan Goes Electric!』を原作に、伝説のミュージシャンボブ・ディランの若き日の姿を描いた作品。

第97回アカデミー賞で作品賞をはじめ計8部門でノミネートされています。

オススメ度4.4



あらすじ&予告編

1961年の冬、わずか10ドルだけをポケットにニューヨークへと降り立った青年ボブ・ディラン。

恋人のシルヴィや音楽上のパートナーである女性フォーク歌手のジョーン・バエズ、そして彼の才能を認めるウディ・ガスリーやピート・シーガーら先輩ミュージシャンたちと出会ったディランは、時代の変化に呼応するフォークミュージックシーンの中で、次第にその魅了と歌声で世間の注目を集めていく。

やがて「フォーク界のプリンス」「若者の代弁者」などと祭り上げられるようになるが、そのことに次第に違和感を抱くようになるディラン。  高まる名声に反して自分の進む道に悩む彼は、1965年7月25日、ある決断をする…




作品情報

原題:A Complete Unknown

製作国:アメリカ(2024年)

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

監督・脚本:ジェームズ・マンゴールド

本編:141分

出演:ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルックほか



レビュー

まるでドキュメンタリーを観ているかのような作品。

ミネソタ出身の無名のミュージシャンだった19歳のボブ・ディランが、時代の寵児としてスターダムを駆け上がり、世界的なセンセーションを巻き起こしていく様子を描いていた本作。
圧倒的なのは劇中で40曲の生歌を披露するティモシー・シャラメ。
世代でもないし有名な数曲を知っているに過ぎないが、売れっ子俳優を起用しながらもしっかりと本人に見えるのは凄まじい。  楽曲もさることながら耳が幸せ。
モニカ・バルバロやエドワード・ノートンの歌唱力にも感服しかない。
弾き語りシーンが多いため割と長尺ながらもあっという間に感じるし、60年代のアメリカらしさ光る服装や車、街の風景などのセットも控えめに言って最高。
この手の映画は昨今トレンドと言って良いほどに製作されてきているが、「ボヘミアン・ラプソディ」(2018)のヒットが大きいのは間違いない。
それに比べると若き日を切り取った本作は、最初からアーティストとして完成されているボブ・ディランのスターダムを駆け上がるところと葛藤だけを描いているので、正直脚本としては厚みに欠けるし物足りなさを感じざるを得ない。
それゆえにドラッグや酒で身を滅ぼしたりすることもなく、創作活動に勤しむ希代のシンガーソングライターのドキュメンタリー的に観るのが丁度良いようにも思える。
ボブ・ディランをこよなく愛する往年のファンからした評価は分からないが、個人的には十分楽しめたし、どの曲も身に沁みたし、それどころかギターを持ち替える際にはグッとくるものもあった。

アカデミー賞ノミネートも納得できる良作であることは間違いない。



評価

脚本3.0

配役5.0

演出4.0

音楽5.0

映像5.0



IMDb 7.6 / 10

ROTTEN TOMATOS Tomatometer 81% Audience 95%

metacritic METASCORE 70 USER SCORE 7.1