ハピネットファントム・スタジオから2023年12月8日に劇場公開された「市子」の感想記事です。
監督の戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品でもあり、サンモールスタジオ選定賞2015では最優秀脚本賞を受賞した「川辺市⼦のために」を原作とした作品です。
オススメ度
あらすじ&予告編
2015年8月。 大阪で恋人の長谷川と慎ましくも幸せな日々を送る市子はプロポーズを受けた翌日突如失踪する。
訪れた警察は市子という女性は存在しないという。
長谷川が市子の行方を追う最中、市子の旧友や知人らから市子の壮絶な半生が明かされていく…
作品情報
製作国:日本(2023年)
配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:戸田彬弘
本編:126分
出演:杉咲花、若葉竜也、森永悠希、倉悠貴、中田青渚、石川瑠華、大浦千佳、渡辺大知、宇野祥平、中村ゆりほか
レビュー
自分が、または目の前にいる人物は何者か。
東野圭吾の「白夜行」や、昨年のアカデミー賞受賞最多8部門受賞が記憶に新しい「ある男」(2022)でも問われた存在証明。
人種や肩書きをはじめ色々なものを脱ぎ、名前までも捨て最小単位となった”ある男”という存在と対照的に、戸籍を持たないため存在証明すら出来ない女性を描いた本作。
サスペンスでもないし、社会問題を提起しているわけではない。
出生から始まった想像を絶する過去を、どのようにして生きてきたかという背景を混じえ、罪を犯しても強かに生きる女性を描いたストーリーは、忙しなく時系列を変えながらも、多くを語らない奥行きのある演出が抜群に効いていて感情を揺さぶります。
哀しい過去を振り返っていくのがメインなのにも関わらず幸せな時間が心に焼き付くのは、ひとえに杉咲花演じる市子の表現力であると感じます。
市子の状況に置かれたら毅然として強く生きられるだろうか…
そんな想いにも駆られる演出の数々と、演技力溢れる俳優陣が作り出す絶妙な空気感が心地よい良作です。
評価
脚本
配役
演出
音楽
映像
IMDb 6.6 / 10
コメント