ボーはおそれている

ハピネットファントム・スタジオから2024年2月16日に劇場公開された「ボーはおそれている」の感想記事です。

オススメ度3.8



あらすじ&予告編

日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。

母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。

その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく…




作品情報

原題:Beau Is Afraid

製作国:アメリカ(2023年)

配給:ハピネットファントム・スタジオ

監督・脚本・製作:アリ・アスター

本編:179分

出演:ホアキン・フェニックス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアンほか



レビュー

アリ・アスターの第1作「ヘレディタリー 継承」(2018)では独創的な世界観とホラー描写に震撼させられ、カルト教団の閉鎖的コミュニティーを訪れた若者たちに起こる悲劇を描いた2作目「ミッドサマー」(2019)は独創的過ぎてもはやよくわからないけど嫌悪感だけ残った。

よって3作目となる本作には期待感と懐疑的な思いが入り混じった複雑な感情を抱きつつ臨んだが、結論から言えば個人的には一番のお気に入りになった。 そういう人も多いのではなかろうか。

不安症のボーに次から次へと降りかかる災難が目的地になかなか辿り着かせない感じがもはやコメディで、ユーモア要素がちゃんと笑えるクオリティになっている。

冒頭から面白いだけでなく、スタイルを少しずつ変えながら程よい刺激と退屈感を混じえ、おそらくアリ・アスターの思惑通りに観客に戸惑いを生んでいる。

ホアキン・フェニックスによる不安と困惑と恐怖と苦痛の演技が絶品なのは言うまでもないが、アリ・アスターの演出との相乗効果もあり、地獄のような状況ながらも喜劇のようにずっと楽しめ、長尺ながらも飽きることなく楽しめる。

常に最悪のことを想像して生きるとはどれだけ窮屈だろう、と不安症とは大変な症状なのだと思わせられつつも、嫌な想像は映画の中に置いてけと言わんばかりに現実世界に持ち帰る感情はないように思える。

生きることは悩ましくおそろしい。が、本作が紡いだストーリーはどう解釈すれば良いのか。 考えることに意味などないかもしれない。

悪魔的ながら美しさに満ちた幻想的な空間を楽しむだけならこれ以上ない良作だろう。


評価

脚本3.0

配役5.0

演出4.0

音楽3.0

映像4.0



IMDb 6.7 / 10

ROTTEN TOMATOS Tomatometer 68% Audience 71%

metacritic METASCORE 63 USER SCORE 6.4