岸辺露伴は動かない 懺悔室

アスミック・エースから2025年5月23日に劇場公開された「岸辺露伴は動かない 懺悔室」の感想記事です。

荒木飛呂彦の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのスピンオフ「岸辺露伴は動かない」を高橋一生主演で実写化したテレビドラマの映画版第2作。

オススメ度4.2

あらすじ&予告編

人気漫画家の岸辺露伴はベネチアの教会で、仮面をかぶった男の恐ろしい懺悔を聞く。 それは、かつて誤って浮浪者を殺した男がかけられた「幸せの絶頂を迎えた時に“絶望”を味わう」という呪いについての告白だった。 男は幸福から必死に逃れようとしてきたが、ある日無邪気に遊ぶ娘を見て「心からの幸せ」を感じてしまう。 その瞬間、死んだはずの浮浪者が現れ、男はある試練に挑むことになる。

そんな男の奇妙な告白にのめりこむ露伴は、相手の心や記憶を本にして読む特殊能力「ヘブンズ・ドアー」を使用するが、やがて自身にも呪いが襲いかかっていることに気づく…

作品情報

製作国:日本(2025年)

配給:アスミック・エース

監督:渡辺一貴

本編:110分

出演:高橋一生、飯豊まりえ、玉城ティナ、戸次重幸、大東駿介、Andrea Bellacicco、井浦新ほか

レビュー

原作の世界を完璧に再現するために全編ヴェネツィアでロケが行われた本作。
パリもそう思ったが、岸部露伴とヴェネツィアが合いすぎる。
全編ヴェネツィアロケは邦画初らしく、パリに続いて観光名所が撮影チームに協力的なのは、「ジョジョの奇妙な冒険」と荒木飛呂彦の海外での人気や知名度が窺い知ることが出来る。
「ジョジョ」xイタリアといえば、シリーズ第5部「黄金の風」の舞台としているし、ミケランジェロの彫刻に影響を受けた”ジョジョ立ちなど、芸術や歴史的建造物をはじめとするイタリアの文化と荒木作品の親和性の高さは当然の結果と言える。
一見ヴェネツィアの景観を大いに映し出すように見える広角ショットが織りなす歪みは、ジョジョ特有の奇妙さと完全にマッチ。 路地の狭さも絶妙すぎる。
幸運と不運という紙一重のものを敢えて逆説的に描き、”幸せに襲われる”ことをテーマに、後半部分の原作にないオリジナルストーリーが非常に良かった。
岸部露伴のマンガに対する情熱も垣間見れたし、じっくり紡ぐストーリー展開は矢継ぎ早に展開する作品とは一線を画し、詰め込みすぎず余白や間も大事にすることで好感が持てる。
高橋一生と飯豊まりえが結婚を発表した後の撮影で、新婚旅行ムービーなるコメントが妙に記憶に残っているが、全くそんなことはなく、クスりとする掛け合いはむしろ少ないだろう。 

キャストとしては苦悩する役を演じる大東駿介の演技の上手さが光った。 高い表現力ももちろんだが、デフォルメされた過剰さがマンガチックに見えるのは圧巻。 シークエンスの緊迫感と相まって非常にインパクトを残していた。

原作へのリスペクトと映像化への真摯な取り組みとスタンド描写の少なさが功を奏し、素晴らしいクオリティで実写化された本シリーズ。 スタンドバトルがないので安っぽい視覚効果が実写作品の質を下げるリスクを回避できているため、どんどん良作が生まれそう。

評価

脚本4.5

配役5.0

演出4.0

音楽3.5

映像4.0

IMDb 6.8 / 10